11月26日12時23分配信 産経新聞
硫化水素自殺に悪用され、全国の薬局で販売自粛措置が取られるなどした影響を受け、武藤鉦製薬(名古屋市)が10月末で、イオウ成分を含む入浴剤「六一〇(ムトウ)ハップ」の製造を中止したことが分かった。
すでに販売自粛は解除されているが、同社は「知らない薬局も多く、作っても売れない状況が続くなどし、製造を中止を決めた」としている。ムトウハップは同社の唯一の製品で、今後は別事業で会社を存続させるという。
ムトウハップは、硫黄や生石灰などを主成分としている。硫黄が入っている入浴剤は、ほとんどなく「家庭で温泉気分が味わえる」として人気だった。また、薄めて湿布すると腰痛や皮膚炎にも効くとされ、愛好者は多岐に渡っていた。
しかし、今年1月ごろにインターネット上に、硫黄成分を含む入浴剤と洗剤を混ぜる硫化水素自殺の方法が紹介されて以降、状況が一変。
自殺者のほか、巻き添えで死亡する家族も出るなど社会問題化し、日本チェーンドラッグストア協会が硫黄成分を含む入浴剤の販売自粛を加盟の小売店に要請。ムトウハップの返品が相次いだ。
販売自粛要請は7月には解除されたが、同社は「多くの店は解除を知らず、倒産などの誤ったうわさも流され、返品は止まらなかった」。こうしたことを受け、製造中止を決めた。
同社は創業102年になるが、ムトウハップの販売だけに頼って会社経営を続けてきた。社員のひとりは「長く続けてこられたのも製品が良かったから。こんなことで製造中止に追い込まれるなんて…」と話していた。