11月30日12時1分配信 毎日新聞
◇分蜂や天敵から巣を守る行動観察
高山市朝日町胡桃(くるみ)島の秋神温泉で旅館を営む小林繁さん(71)が、庭のクリの古木にすみついた在来種のニホンミツバチ(蜜蜂)の巣を、約30年前から野外学習などで訪れる子どもたちに見せている。天敵のオオスズメバチなどから集団で巣を守ったり、女王バチが働きバチを連れて年に1度、巣別れする分蜂(ぶんぽう)を繰り返すなどの生態は、子どもたちの自然観察の生きた教材となっている。【奈良正臣】
ニホンミツバチが巣づくりしているクリの木は幹回り1・8メートルの大木。高さ1メートルほどの場所に長さ40センチ、幅5センチほどの洞があり、ミツバチが出入りしている。真夏の暑い盛りには、数百匹が入り口で一斉に羽をあおって涼しい風を巣の中に送り込んだり、天敵のオオスズメバチが侵入すると、数百匹がひと固まりになって威圧して追い払うなどの光景も見られるという。
小林さんはミツの採取をしておらず、巣の構造は分かっていない。小林さんは「30年間、世代交代を繰り返しながら同じ場所にすみついているのも生活環境が合うのでしょうか」と話す。
ミツバチは、世界で9種が知られており、日本にはニホンミツバチとセイヨウミツバチが生息する。ニホンミツバチは、商業的な養蜂に使われるセイヨウミツバチに比べて、ひと回り小さく体長約1センチ、体が黒っぽいのが特徴。
最近、飛騨地方ではニホンミツバチの飼育が静かなブームで、高山市郊外の高根町、朝日町などで約50軒が飼育を楽しんでいる。採取できるミツの量が少ないために希少価値があり、人気になっているという。