【特報 追う】「遠野風の丘」人気の秘密 1000万人突破の道の駅

12月5日8時3分配信 産経新聞

 ■ 地場産品「消費者求める品ぞろえ」

 岩手県遠野市綾織町の道の駅「遠野風の丘」の延べ来場者数が、1000万人を突破した。観光都市・遠野の玄関施設としてオープンから10年4カ月余りでの記録達成で、大台に達したのは県内30駅で初めて。数多くの地場産品を販売する物産展示ホールなどが人気を呼び、内陸と沿岸を結ぶ交通の要衝路としての好立地もあって東北でも指折りの集客力を誇る道の駅に成長した。(石川裕司)

 「関係者の努力と取り組みの成果が実った。今後も2000万人、3000万人を目指し、もてなしと思いやりの心で、地域資源を生かした遠野ならではの工夫をこらしながら、岩手が誇る施設にしていきたい」

 11月16日、来場者1000万人達成記念セレモニーで、「風の丘」を運営する遠野ふるさと公社理事長の本田敏秋遠野市長はこう語って、胸を張った。

 平成10年6月30日にオープンした「風の丘」は、翌11年8月27日に県内で17番目の道の駅に認定された。施設面積は県管理、市管理分を合わせ、全体で約1万7700平方メートル。駐車場(大型14台、普通 119台など計 136台)、レストラン、産直施設を含めた物産展示ホール、無料休憩所などが入った情報交流センターが整備されている。

 オープンから5年間の年間来場者数は84万-99万人台だったが、16年度に初めて 100万人台を突破。19年度は釜石-遠野間を結ぶ新仙人峠道路の開通などで過去最高の 107万人台に伸びた。

 ふるさと公社事務局長兼遠野風の丘支配人の菊池美之(よしゆき)さん(45)によると、来場者としてカウントされるのは建物内に入った利用客だけ。屋外の飲食施設や駐車場、トイレの利用客は含まれず、営業時間外(午後7時-翌朝午前8時)に休憩に訪れる人もカウントしないので、実際の来場者はもっと多いという。

 菊池支配人は「沿岸と内陸を結ぶ中継点であり、市内を巡る観光客の拠点として利用されていることが大きいが、産直や菓子類、工芸品などを買い求めて来るリピーターも数多い」と分析する。

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 人気を集める物産展示ホールは産直コーナーと、業者が出店する土産品コーナーとに大きく分かれる。産直コーナーには現在、市内の専業農家など約70人が毎日、新鮮な野菜や果物、花き、漬物、酪農製品などを運び入れる。

 市農産物直売組合の菊池康祝(やすのり)組合長は「開設当初は 100人を募集して82人が登録した。高齢化などで出荷を取りやめた人もいるが、家族の強力でがんを克服してがんばっている人もいる。安さと新鮮さ、安全食品という消費者が求める品をそろえていることが評価され、一日に4、5回も追加で搬入する人もいる。お客さんと接し、物を売ることに張り合いを持ち、全員、ここに来るのを楽しみにしている。それだけに、なんとかここに出荷したいという問い合わせも多い」と産直の現状を説明する。

 土産品コーナーにも変化が出始めた。菊池支配人は「業者の2代目や後継者が東京などからUターンして、ここの店舗をまかされている。若い人が出入りして活気が出てきている」と、市の活性化に結びついている効果を指摘する。

 レストランなども含めた年間売上額は6億円前後で推移しており、19年度は約6億4600万円と14年度に次ぐ売り上げを記録。個人で 800万- 900万円を売り上げている人も何人かいるという。

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 東北では、「風の丘」に先駆けて来場者数が1000万人を突破した道の駅が、「寒河江」(山形県寒河江市)や「あ・ら・伊達な道の駅」(宮城県大崎市)など数カ所ある。

 「寒河江」は、道の駅の登録が始まった5年に認定された施設で、市特産のさくらんぼ資料館や5000人を収容できるイベント広場などを備え、開設から7年目で1000万人を達成。「あ・ら・伊達」は12年のオープンだが、鳴子温泉への行き帰り客や地場の農産物を買い求める人たちなど年間 200万人を超える来場者でにぎわっており、19年度は約 350万人が訪れたという。

 東北道の駅連絡会事務局(仙台市)の平間耕吉さん(62)は「カウンターを設置している施設は別として、実際に来場者数を把握するのは難しい。東北全体では 100を超す駅があるが、年間10万人も訪れればいい方。 100万人を超える施設は、遠野風の丘も含めて関係者が日々努力し、多くの客を引き付ける魅力を出しているのだと思う」と話している。

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 ■道の駅 道路利用者のための「休憩機能」「情報発信機能」「地域の連携機能」を備えた休憩施設。市町村または公的な団体が設置するが、無料で利用できる十分な容量の駐車場、清潔なトイレ、道路や地域の情報を提供する施設、さまざまなサービス施設、バリアフリー化された歩行路を整備する必要があり、申請を受けて国土交通省が登録する。

 平成5年4月に第1回登録がスタートして以来、20年8月までに全国で 885駅が、東北6県では 128駅が登録されている

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