12月8日7時7分配信 西日本新聞
九州新幹線西九州(長崎)ルート長崎‐諫早など未着工区間の2009年度着工をめぐり、政府と与党が対立している。次期衆院選をにらみ、09年度着工を政治的成果としたい与党は、財源確保のため着工条件の緩和を要求。政府は公共工事のばらまき批判を恐れ、抵抗している。与党は10日にも、着工要望を決議する方向で、政府・与党の攻防はヤマ場を迎える。
「国土交通省はもっと夢をもってほしい。やる気がない」
11月中旬、与党整備新幹線建設促進プロジェクトチームの会合では、議員の激しい言葉が飛び交った。「このままでは選挙に勝てない」など、露骨な発言もあった。
九州の長崎‐諫早、北海道の新函館‐札幌、北陸の金沢‐敦賀の未着工3区間の最大の課題は、将来の財源を確保する見通しが立たないことだ。
与党は、JR各社が開業区間の施設使用料として国に支払う貸付料を担保に資金を調達する方法を探った。国交省の試算によると、この手法では最大6000億円を建設費に充当できるが、3区間の総事業費は2兆円超で、遠く及ばない。
財源を積み増すため、与党内から、04年12月の政府・与党申し合わせを変更する考えが浮上した。新規区間の工期の「おおむね10年」を延長するというのだ。
現在、整備中の九州新幹線鹿児島ルート(博多‐新八代)、西九州ルート(武雄温泉‐諫早)など5区間は全区間で事業が終わる17年度まで、国の公共事業費など総額2兆7000億円を財源として充当する。
未着工3区間を09年度に着工した場合、公共事業費から充当できるのは、事業終了年の18年度分(推計1300億円)だけとなる。工期を延長すれば、事業終了年度が遅くなる分、公共事業費からの充当額が増えるという思惑だ。
政府は抵抗している。工期延長について、金子一義国交相は会見で「節度を失ってはいけない」と批判。「選択と集中」で効率化を図る公共事業のあり方を訴えた。
貸付料を担保に資金を調達する手法も、試算はJR各社の了解を得ていない。国交省幹部は「財務省は、算定基準があいまいとして認めないかもしれない」と話す。
それでも、与党議員は「最後は政治の決断だ。後は役所にきちんと押しつけられるかどうかだ」と意気込む。一方、国交省は「財源のめどが立たぬまま、リスクを抱えて着工すれば、世論の批判を浴びるのは必至」と防戦の構えで、攻防の行方は予断を許さない。
(東京報道部・斉田康隆)