次の一手:天童市の課題/上 観光 客減少に危機感 /山形

12月11日13時0分配信 毎日新聞

 ◇足湯、散策で「癒やし」演出も
 遠藤登市長の辞任に伴う天童市長選は14日告示、21日投開票される。ともに無所属新人で、前県議の海鋒孝志氏(58)と、前会社社長の山本信治氏(61)=自民、公明推薦=の2人が立候補を表明している。選挙戦を前に、市の現状と課題を探った。【林奈緒美】
 天童市の温泉街で店を構える男性店主(56)は、ほこりをかぶった将棋駒のキーホルダーを見て、ため息をついた。「昔は、土産物も飛ぶように売れたんだが……。最近はカランコロンというげたの音もめっきり聞こえなくなった」
 観光の看板・天童温泉。ピークの95年ごろは、花笠の季節ともなれば、ホテルや旅館の駐車場に数十台の大型観光バスが並んだ。昼は果樹園でサクランボ狩り、夜は浴衣姿でスナックやカラオケ。温泉旅館の女将(おかみ)らでつくる「お駒会」の高橋ゆき江会長は「待ってるだけでお客が来る時代だった」と懐かしむ。
 しかし、団体旅行から家族やカップルへと旅の主流が変わり、天童温泉の観光客数は、95年度の130万8000人をピークに激減。06年度は80万7000人にまで落ちた。
 部屋の稼働率を上げようと、6人部屋を2~4人部屋へ改築した旅館もあったが、あまり回復しなかった。13年前に17軒あったホテルや旅館は休業や廃業で13軒に減った。91年に1482あった飲食店などの店舗も04年には1336店舗になった。
 客の求めも変わった。「のんびりしようと思ったのに、温泉が街の真ん中にあるのか」と、市に時折苦情が寄せられる。高橋会長は「以前の団体客と違い、山あり谷あり湯煙ありの癒やしを求める。それに応えるよう街を挙げて取り組まないと衰退する」と危機感をあらわにする。お駒会は、街を散策してもらおうと、街中に茶店を模した赤い傘とベンチの休憩所を置いたり、手作りマップを作ったりと雰囲気つくりに力を入れた。
 今野滋観光物産課長は「観光は景気に左右される。市は十分な補助金を出していると自負している」と話す。しかし高橋会長は「私らだけでできることは限られる。観光はお金になることを、市にはもっと理解してほしい」と、不満を漏らす。
 女将らの要望で、市は07年、温泉街の一角に足湯をオープンさせた。足湯は03年の上山温泉や、01年の銀山温泉に遅れたが、来年1月までに、市内3カ所に作り街の中心部を三角形で結ぶ。観光客は少しでも増やせるだろうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA