福岡県庁には工業技術センターという組織があって、産業振興や次世代産業の育成に向けて日々、研究や開発に取り組んでいます。
実は、地道な裏方の公務員さんの研究成果を元に、今、福岡県産の新たな商品が次々と生まれているんです。
今年9月、これまでにない高さ1.3メートルを誇る巨大な博多人形が披露されました。
博多人形は、焼き上げる際の縮み具合が激しく大きければ大きいほど、ヒビが入りやすくなるため、これまで1メートルを超えるような人形の製作は実現しませんでした。
この難問を解決しようと、粘土の研究に取り組んだのが、福岡県の工業技術センターでした。
技術センターでは、縮みの原因となる「粘土鉱物」の割合が高かった博多人形の粘土に、粘土鉱物が少ない別の粘土を配合したのです。
伝統と技術が結びついてできた大きな博多人形。
県内では他にも技術センターの研究と結びついた新たな特産品も生み出されています。
久留米市では地元の農家と技術センターが協力し、健康食として注目を集めるヤーコンの栽培を研究、現在、地元の物産館ではヤーコン茶や、ヤーコン入りの黒棒が販売されています。
そして今、新たに取り組まれているのが、筑後市の船小屋温泉から湧き出る鉱泉を使って木材を着色する研究です。
この研究を依頼したのは佐賀県上峰町のデザイナー・関光信也さんです。
家具製品の色づけで、化学物質などの有機塗料による着色が主流となるなか、環境に優しい着色方法を探していた関光さんはある時、鉄分と木の成分が反応して木の色が変色することを知りました。
関光さんは、この着色方法による研究をすすめて欲しいと、大川市にある技術センターのインテリア研究所に相談を持ちかけました。
研究員の古賀さんは、筑後市にある船小屋温泉の鉱泉に鉄分が多く含まれていることを思いつき、この鉱泉水を使った研究をはじめたのです。
鉱泉を管理する筑後市も研究に期待を寄せています。
木材は鉱泉に含まれる鉄分と木に含まれるタンニンが反応して変色します。
古賀さんはこれまでに、15種類の木材を使って研究をすすめていますが、そのうちおよそ7割の木材で発色したということです。
関光さんが試作した鉱泉染めのテーブルを使っている友人デザイナーの評判も上々のようです。
さらに関光さんと古賀さんは、高級材として知られる神代杉に似た色合いも出せる、この着色方法を大川の家具に取り入れられないかと考え、地元の製作所と実現に向けた取り組みを進めています。
現在、福岡市内の工房では博多人形師・川崎幸子さんが二体目となる巨大博多人形の制作に取り掛かっています。
技術センターの二体目のテーマは塗装です。
博多人形は触ると色落ちする上、汚れを拭き取ることができないため通常はガラスケースで保護されています。
センターでは手で触れても色落ちしない塗装技術の研究に取り組んでいます。
最先端の技術研究とともに、次はどんなものが誕生するのか期待は膨らむばかりです。
[17日20時18分更新]