12月18日9時19分配信 産経新聞
志賀直哉の小説「城の崎にて」で知られる城崎温泉(兵庫県豊岡市)の温泉寺本堂にまつられ、「霊木伝説」のある本尊・木造十一面観音菩薩立像(国指定重要文化財)が、来年4月から2カ月間、特別公開される。長期公開は開山以来初という。
同寺は同温泉を開いたといわれる道智上人が創建した古刹(こさつ)。像はヒノキ材を使った高さ約210センチの一木造。同寺では毎年4月の「開山忌」にだけ公開している。
資料によると、平安時代中期、奈良の仏師・稽文(けいもん)が観音像を彫っていたところ中風を患い、未完成のまま城崎温泉へ治療に訪れた。その後、症状が回復し、温泉そばの円山川周辺を散歩中、奈良に置いていた未完の仏像が川に浮いているのを見つけ、近くの草庵に安置した。
稽文は奈良に帰ろうとしたが、病気を再発。夜になって観世音菩薩が夢に現れ、「早く我を完成させよ」と告げたため、城崎温泉にとどまり、この像を一気に完成させたという。
像は稽文が不在の奈良で疫病が流行り、住民が病気治癒を願って川に投げ入れたとされ、像は「一願成就」に御利益があるという。
小川祐章副住職は「本尊の不思議ないわれに触れてもらえたら」と話している。