12月24日2時33分配信 毎日新聞
東京国税局の単身者寮を舞台にした偽装請負疑惑で、寮の管理業務を請け負った民間会社4社のうち、少なくとも2社は管理人と正式な労働契約書を交わしていないことが分かった。管理人らは「365日休みがない」と労働環境の劣悪さを訴えており、会社側のずさんな労務管理の実態が浮かんだ。
東京など4都県にある27単身寮のうち、都内にある寮の男性管理人は「会社からは『土日は休み。平日の勤務は朝8時から夜6時まで』と聞いたのに違った」と不満を訴えている。午前6時過ぎに業務が始まり、ごみの分別や清掃、共同風呂の準備などに追われて、最後の巡回が終わるのは午後11時ごろ。土日も巡回や入退寮の立ち会いがあり、急な病人が出れば病院に付きそう。だが、休日などの手当は一切なく、決まった金額の月給が振り込まれるだけだという。
男性は「一年中ずっと休めない。国の機関に従事しているのにこれでいいのか。手当がないのなら、決まった労働時間を守ってほしい。会社にどういう契約なのか聞いても答えてくれない」と話している。労働組合「日本労働評議会」(間野浩毅書記長)が同局の管理人を対象に実施した聞き取り調査では「冠婚葬祭にも行けない」「民間よりひどい」との回答が寄せられているという。
管理人らが結成した組合側との団体交渉に応じた1社は、管理人と正式な契約書を交わしていないことを認めて謝罪した。別の会社は毎日新聞の取材に「最初の年は契約書を交わしたが、2年目以降忘れていた。管理人と話し合って改善したい」と回答した。【銭場裕司】
◇解説 「官製ワーキングプア」改善を
1年単位の契約が終われば仕事と住まいを同時に失う弱い立場の管理人が偽装請負を告発したのは、正当な休みもとれない労働環境に耐えかねてのことだ。管理人の相談を受けている指宿昭一弁護士は「1日16時間以上働くひどい環境の人もいる。官製のワーキングプアだ」と指摘する。国税側は請負会社に対し、管理人が不当な労働環境に置かれないように求める責任がある。
単身者寮の管理業務は00年から順次、外部委託に切り替わった。このため国税側は、管理人の休日や賃金について「委託した業者の従業員なので把握していない。会社に聞いてほしい」と説明する。
だが、管理人側は「国税は勤務内容を日報で把握していた」と口をそろえる。ある管理人は「国税は勤務内容をすべて知って指示しているのに、休みや労働環境には関心がなく、責任を会社に丸投げしている」と訴えている。使用者責任があいまいな偽装請負のしわ寄せが管理人に来ている状況とみられ、早急な改善が望まれる。【銭場裕司】