12月24日15時1分配信 毎日新聞
(届け出順)
武雄市民病院を北九州市の医療法人「池友(ちゆう)会」に移譲することの是非を問う武雄市長選(28日投開票)に出馬した反対派の元旧武雄市長、古庄健介候補(70)と推進派の前市長、樋渡啓祐候補(39)=共に無所属=に市民病院のあり方や将来の地域医療を尋ねた。【聞き手・関谷俊介】
◇介護施設との連携図る--古庄健介候補(70)
――なぜ市民病院存続か?
◆財源の面からだけで経営形態を考えるべきでない。うまく運営されており、財政面からも民間移譲の理由は見つからない。
――市民病院の機能はどうあるべきか?
◆地元医師と連携が取れていた1、2次(※注)のこれまでの医療が一番いい。3次(※注)は周辺にあるから、武雄市にはいらない。
――累積赤字(07年度約6億4000万円)もある。どのような経営をするか?
◆累積赤字には(時間の経過と共に建物や設備の価値が減少する)減価償却分も含まれている。営業努力で黒字化を図る。
――旧武雄市長在任時には05年度からの黒字化を目指したが、達成されていない。
◆これまで(交付税以外の)一般財源からの繰り入れはなく、許容範囲だ。07年度上半期には4600万円の黒字を達成している。
――どういう状況なら、経営形態を変更すべきと考えるか?
◆市民の理解が得られないほど赤字の補てんがあれば次の段階を考えなければいけない。
――池友会が撤退し現在いる医師を引き揚げた場合、市民病院の医療をどうするか?
◆当面は、地元の医師に頼り、輪番制を敷いて対応してもらう。
――地方で医師が不足する中、どうやって確保するか?
◆旧武雄市長在任時に佐賀大関係者と話をしたが、大学からの医師派遣は十分可能だ。
――市議会は民間移譲を承認している。
◆(白紙撤回に向けて)理解を得る努力をしなければいけない。
――市にはどのような地域医療が必要か?
◆人口が減少し高齢化が進むので、高齢者の医療と介護が課題となる。市民病院と介護施設を連携させたい。
◇医療中心の町づくりを--樋渡啓祐候補(39)
――なぜ、民間移譲が必要か?
◆市民病院の赤字が市財政を圧迫し、(04年度にスタートした、研修医が自由に研修先を選ぶことができる)臨床研修制度で医師派遣を大学に頼ることも限界に来ている。
――なぜ池友会への移譲が最善なのか?
◆池友会は医師充足率200%で、医師の確保が期待できる。救急救命が得意で、患者の評判も良い。
――新病院で目指す医療は?
◆1~3次(※注)のバランスの取れた医療をする。終末医療にも対応する。
――民間移譲のデメリットは?
◆(民間は)大学が得意とする特殊疾患に対応できないが、他にはないと思う。
――医療専門家を入れた審議会設置を見送るなど経営形態決定の手続きに批判がある。
◆あくまでも市と市議会が経営形態を考える。医療内容はその後で、市や医師会、池友会などが考える。
――昨年12月議会で複数の医療機関との接触が明らかとなり、市民病院の医師が辞職願を出した。
◆全国的な地方の医師不足の流れの中で、いつか来る道だった。
――関係が崩れた医師会や大学と池友会との連携は?
◆患者のことを第一に考えれば、地元医師と連携でき、大学とも補完し合える。
――民間移譲後もこれまでの市民病院の公益性は保てるか?
◆市の改革ビジョン(5月策定)や、私のマニフェストに拘束され、新病院の経営状況を市議会に報告する。
――どんな町づくりを目指す?
◆医療中心の町づくり。病院食で無農薬野菜を使ったり、検査に来た人に温泉に浸かってもらい、医療と農業、観光をつなげたい。
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※注 救急医療は症状により3段階に分かれる。▽1次は風邪など軽症の患者に対応する医療▽2次は比較的専門性の高い手術などが必要な入院に対応する医療▽3次は緊急入院が必要な心筋こうそく、交通事故などに対応する専門性の高い医療。