1月12日6時12分配信 河北新報
旅先の観光地周辺で集合、解散する「日帰り現地ツアー」が東北に広まってきた。2007年の旅行業法の規制緩和で、地元の旅行会社や観光協会がツアーに参入できるようになったためだ。名所旧跡がメーンの従来型旅行に対し、隠れた名所探訪や住民のガイド解説付きなど現地ならではの魅力を盛り込んだ「小さな旅」がセールスポイントになっている。
盛岡観光コンベンション協会(盛岡市)は4―10月、市内を巡るバスツアー「盛旬(せいしゅん)バスプラン」を70回開催する。発案した畑山茂観光コンベンション部長(59)は「最高の盛岡の旬を楽しんでほしいと命名した」と売り込む。
春は盛岡地裁にある石割桜、石川啄木記念館などの「定番」に米内浄水場のシダレザクラ、地元産クレソン使用のラーメン昼食を加える。料金は大人5800円、子ども3500円。夏以降も一般の観光客は行きにくい朝市や酒蔵見学を用意する。
福島市のNPO「土湯温泉観光まちづくり協議会」は07年、地元ツアーをスタートさせた。「2泊3日の中日に、宿泊客に喜んでもらおうというのがきっかけ」と担当の加藤成良さん(49)。3000円前後の川魚のつかみ捕りや雪ぐつ体験が人気という。
会津鉄道で東京と結ばれる福島県南会津町。南会津観光公社は、湿原や名所をタクシーで効率よく回れる割安な半日ツアーを実施している。料金は2000―1万円台だ。
地元組は地域を知り尽くす強みとアイデアで魅力を発掘。大都市圏から訪れる旅行客の日程への組み合わせを狙うが、受けるかどうかは企画力が勝負になっている。
山形県遊佐町のNPO「遊佐鳥海観光協会」は子どもの海山体験などで実績がある。帯谷隆専務理事(52)は「大都市圏からは交通費負担が大きい。ありきたりの自然や農村体験では人が来ない」と言う。鳥海山トレッキングや名水巡りなどのガイド育成を進める。
仙台市の観光コンサルタント庄子公喜さん(59)は「地元の魅力を磨く機会としてはいいが、地元の人が良いと思っても、観光客が求めるものを理解して売り込まなければ集客には結び付かない」と話している。
【旅行業法の規制緩和】
宿泊や移動を伴う旅行の企画・募集は登録業者しかできない。国内旅行の場合、従来は有資格者の選任と営業保証金1100万円、基準資産700万円が必要だったが、業者所在地と隣接市町村で完結する旅行に限り、それぞれ300万円に引き下げられた。