2月24日17時1分配信 毎日新聞
◇「相手を思う心」大切
つるぎ町貞光の町就業改善センターで23日、落語家・桂七福さん(44)の講演会「笑いは心の深呼吸」が開かれた。珍しい人権をテーマにした落語講演に観客は笑いとともに「気持ちを伝えること」や「相手を思う気持ち」の大切さをかみしめた。【向畑泰司】
軽快な口調で小ばなしを交えながら、講演は進んだ。
夫がよく言うんですわ。「そんな細かい事どうでもいいやないか」と。これがあかん。気持ちは言わなければ伝わりません。
一番いいのがお風呂なんですわ。だんなが風呂に入ってシャンプーがなかったら、嫁の目をじっと見るんです。それで伝わりますか? 目を見て相手の気持ちが分かるのは冬のソナタだけですわ。ちゃんと言葉で伝えなあかん。伝える時のコツは「すまんけど」と付け加えることです。これがあるかないかで奥さんと同じお墓に入るかどうか決まります。
東みよし町出身。阿南高専で落語研究部に在籍した。卒業後、一度は精密機械メーカーに就職したが、夢を捨てきれずに、91年に上方落語四代目・桂福団治に入門。落語家の道を歩み始めた。
この仕事で思うのは、言葉は言った側と言われた側でとらえ方が大きく違うということ。ただ、言葉はずれて当たり前なんですよ。ずれたら積極的に言い訳をすればいい。訂正するということは、相手を思っている証拠です。
母子家庭で育った。そのことが理由で学校や地域でいじめや偏見を受けた。「何も言わない方がよい」と自ら周りとの交流を断ち切った。これが裏目だった。いじめはエスカレートしていった。胸につかえる過去の苦い思い出と今の自分。「噺家(はなしか)として笑いの中に何か考えるメッセージを発信したい」と15年前から、過去の体験を基に人権をテーマにした講演を始めた。
人権って難しそうに見えますけど、ひらがな7文字で足りるんです。「みんななかよく」。簡単すぎて難しいのかもしれません。いろいろ言いましたけど、私が一番伝えたいのは「シャンプーなくなったらどうするか」。
どうもありがとうございました。