センター試験 京大で受験生に聞く

新型インフルエンザが、16日から始まる大学入試センター試験に臨む受験生の脅威となっている。センター試験の会場となる京都大(京都市左京区)で15日、下見に訪れた受験生に聞くと、初詣でなど外出を控え、マスクやうがい薬を常備し、ランニングで体力づくりをするなど、感染予防のための細かい気配りが垣間見えた。

 約1800人が受験する京大では朝から会場の設営作業が始まった。会場の教室前にはアルコール消毒液が置かれ、下見の受験生もマスク姿が目立った。

 男子高校生(18)は「マスクはどこに行くにも欠かせない。うがい薬も持ち歩き、学校や外出先でうがいしている。バスや電車も避けたいので、下見もためらった」と足早に帰路に就いた。

 教員志望という男子高校生(18)は「毎朝ランニングを続けており、今朝も1時間走った。体力があればインフルエンザにもかからないと思う」。

 家族も受験生を気遣う。女子高校生(18)の下見に付き添った母親(54)は「ビタミンCの多い果物を多めにし、食事の栄養バランスを考えている。万全の状態で試験に臨んでほしい」と語った。

 既に新型インフルエンザに感染した受験生もいた。京都市内の予備校生(19)は「注意していたのに年末にかかった。2日ほど勉強できなかったが、今でなくてよかった。マスクとうがいは心がけているので、ひと冬に2度もかかることはないだろう」と笑った。

 ■受験生のインフルエンザ対策は…(15日、京都大で)

 18歳男現役 外出先にうがい薬を持参し、うがいを繰り返す。

 18歳男現役 勉強部屋にぬれタオルをつり下げて空気の乾燥を防ぐ。

 18歳女現役 人込みを避け、電車やバスにもできるだけ乗らない。

 19歳男1浪 昨冬かかった。気合で乗り切る。

 18歳男現役 毎朝ランニング。今朝も1時間走った。

 19歳女1浪 予備校の自習室は使わず、早く帰宅して自宅で勉強する。

 18歳女現役 厚めの服装。ゆっくりと風呂につかる。

 18歳男現役 ここ数年は風邪をひかず。いつも通りの生活で。

 18歳女現役 人込みを避ける。初詣でにも行かず。

 19歳男1浪 年末にかかった。ひと冬に2度もかからないだろう。

朝青龍、不覚1敗…土俵際でバッタリ

「大相撲初場所5日目」(14日、両国国技館)

 横綱朝青龍に土がついた。不戦敗を除き、過去5戦全勝だった平幕豪栄道に土俵際で引き落とされ、昨年夏場所3日目の安美錦戦以来、25個目の金星献上となった。横綱白鵬は雅山を寄り切り無傷の5連勝。平幕の稀勢の里も無敗を守った。大関琴光喜は豊ノ島を寄り切って初日を出した。

  ◇  ◇

 完勝のはずだった。左を差し、右をおっつけ、朝青龍の流れで、あっという間に豪栄道を追い詰める。あとひと押しで土俵外へ追いやるだけ…。そう思った瞬間、目の前から敵の姿が消えた。体を1回転させて逃げた豪栄道を追い切れず、支えを失った体はそのまま土俵に落ちた。

 飛び交う座布団の中、薄ら笑いを浮かべて控えに下がる。悔しさから、土俵のふちを軽くたたいた。帰り際には付け人に「勝ったと思ったんだけどな」とポツリ。豪栄道の金星獲得インタビューを放送するテレビモニターをにらんだ。初金星だということを確認すると「チッ」と舌打ちし、風呂場へ向かった。

 詰めを誤り「最後までだめ押しするぐらいの気持ちにならないとだめだな」と振り返った。入幕直後から出げいこ先で直接けいこをつけるなど、かわいがってきた相手について「いいんじゃない?勝って喜んでるだろ。勝負は関係ない」と悔しさを押し殺した。

 武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)が「勝ち急いだな」と評した取りこぼし。「まあ、たまたまだな」と強がっていた朝青龍も「立ち合いがよかった。出足もよかった。そこで安心し過ぎた」と素直に反省した。

 前日、33歳の千代大海が引退。一夜明け、29歳の朝青龍が23歳の豪栄道に敗れた。世代交代の波を止めるには、黒星を薬にするしかない。

【能登の風】10.スローライフ

◆まき火 きずな運ぶ◆

 外浦の強い海風が吹き付ける、能登半島の最北端にほど近い珠洲市折戸町。一軒家の居間のいろりに、炭火が赤々とおこる。08年暮れに移住してきたカップル、後藤佑介さん(29)と山本美穂さん(30)の家だ。「意外に温かくて。ストーブだとこうはいかないんです」と山本さん。風呂はまきで炊いている。

       ◇          ◇

◆移住者迎える情と知恵◆

 後藤さんは東京都大田区生まれ。都内で輸入バイクを販売する店を営んでいた。富山県小矢部市生まれの山本さんとは共通の友達を通じて知り合い、遠距離恋愛。同居するに当たってネットで捜して見つけ、借りたのがこの家だ。

 08年秋に下見に来て、自在カギがあるのを見つけた。いろりはふたをしてあり、付近でも使う家はほとんどない。だが、2人には新鮮に見えた。灯油ボイラーが壊れており、「どうせなら」とインターネットでまきボイラーを買った。まきは、大家のおじいさんと間伐に行ったり、廃材をもらったり。炭の使い方は、近くの炭焼き職人の大野長一郎さん(33)に習った。

 「周囲の人たちの生活の知恵に驚かされる」と2人。初めに赤く起こした炭を、夏はほかの炭の下、冬は上に置くと、ぱっと火が広がる。「夏下冬上(かかとうじょう)」というと教わった。近所のお年寄りたちは食べられるキノコを見分け、浜で海草を採って干して売る。

 それに、みんな温かい。特産の大豆の豆がらを「持っていかっしー」とたきつけ用に持たされる。畑で取れた野菜をくれる。留守中、郵便受けにサツマイモが1本入っていたこともあった。自分たちでも、野菜を作り始め、「食べてはいける」と2人は笑う。

 後藤さんは珠洲市のNPO法人で移住希望者の相談に当たっている。大半の人が「仕事はある?」と心配するという。「でも、若い人が来たといううわさがすぐ広まるので『手伝って』と言われます」。山本さんも珠洲焼の店に半年前から勤めている。

 過疎が進む奥能登。珠洲・輪島・穴水・能登の4市町の人口は、05年の国勢調査では20年前の7割に過ぎない。

 各市町は空き家のデータベースや転入者への奨励金制度を設ける。珠洲市は県宅地建物取引業協会と協定を結び、家を借りる際の契約などのサポートをしてもらっている。07年度からの定住化促進事業を利用して移り住んだのは8組20人。「実際にはもっと多いでしょう」と担当者は話す。

       ◇          ◇

 木をくべて使うまきストーブが近年、静かな人気だ。27年前から扱うウッドペッカー(金沢市)によると、工事費まで含めて数十万~100万円ほど費用がかかるが「ワンタッチで使える安全なものが増え過ぎて、味気なくなったためでしょうか。手がかかるけれど、温かみを感じる」と池高明社長(45)。

 輪島市でも雪深い山間部の三井町に住む山下覚(さとる)さん(37)方は、家の改装に合わせてまきストーブを設置したところ、その前に一家が集まることが増えた。美真瑠(みまる)ちゃん(10)と寛人(ひろと)君(6)が寝転がり、覚さんは炎を見ながらビールを飲む。煮込み料理に重宝するという妻の祐美子さん(35)は「子どもが火の危なさも感じられる。不便だけれど心地良い」。

 便利ではないけれど味のあるもの。お金で買うものでなく「持っていかっしー」と交換しあうもの。いろりやまきストーブのような柔らかな温かさが、能登にはある。(角谷陽子)

=終わり

農家民宿 近所に絆

薪(まき)が赤々と燃える昔ながらの大きなかまどで、郷土料理のほうちょう汁や、芋餅を蒸す蒸籠(せいろ)が湯気を上げる。愛南町城辺の農家民宿「のどか」の台所で、にぎやかに料理の腕をふるうのは、宿泊客の農村体験を手伝う地元の女性グループ「おきなぐさ」のメンバー7人。集まったのは、客のためではなく、自分たちの忘年会のためだ。

 「農家民宿を始めて本当によかった」。大広間の机に手料理を並べ、お酒抜きでの語らいを何時間も続けながら、民宿を経営する高平玲子さん(56)は、満面の笑みを浮かべた。

 玲子さんが、柑橘(かんきつ)の専業農家を営む和豊さん(63)のもとに嫁いできたのは35年前。当時は農村の濃密な近所付き合いがまだ残っていたが、新たに移り住んでくる人も増え、徐々に人間関係は薄くなっていった。忘年会に来ていた近くの梅本ミエ子さん(64)は「お隣同士でもあいさつする程度。家に上がって話をすることはなかった」と振り返る。

 そんな希薄な人間関係に玲子さんが寂しさを感じるようになったのは10年程前から。寝たきりの義父の介護などで地域の行事にも参加しづらくなり、外とのかかわりは、メンバーの一人でお隣の松田千束(ちづか)さん(70)と話す程度になっていた。

 「人のつながりは宝。田舎の良さを発信しつつ、近所の人と交流を深めたい」

 2007年4月、玲子さんは、都市住民が農漁村に滞在する「グリーンツーリズム」に町が乗り出したことに背中を押され、自宅の離れで農家民宿を開業。宿泊客に様々な農村体験をしてもらうために、近所の主婦6人に声をかけて「おきなぐさ」を結成した。

 民宿を訪れた家族連れらは、冬は満天の星空にため息をつき、夏は窓を開け放した部屋に蚊帳をつって眠る。おきなぐさのメンバーにこけ玉作りや郷土料理を教わり、五右衛門風呂を自分で沸かしたり、里山を歩いたり。「素朴で懐かしい生活を味わえる」とファンが増えてきた。

 一緒に都会の人々をもてなすうちに、玲子さんが望んでいた近所同士の絆(きずな)も徐々に深まってきた。

 おきなぐさの会長を務める松岡玉子さん(64)は、「昨年秋、メンバーの自宅の新築祝いをここでやった。なんだかみんなが家族みたい」と話し、梅本さんは「集まって話をするだけでも楽しい」。玲子さんは「ガスコンロを消したかどうか不安になり、松田さんに見に行ってもらったこともあった」と笑う。

 のどかは単なる民宿ではなく、地域の仲間が集い、楽しむ場所となった。「外から戻ると、メンバーの誰かが『お帰り』と言ってお茶を出してくれる。そんなふうになれば幸せですね」。玲子さんは、その日が待ち遠しくて仕方ない。(大北恭稔)

(2010年1月12日 読売新聞)

源泉に感謝ささげる 蔵王温泉開湯1900年で神事

国内最古の温泉の一つとされる山形市の蔵王温泉が今年、開湯1900年を迎えた。8日朝には旅館の経営者や観光協会職員らが伝統行事「洞開(どうかい)」に臨み、源泉に感謝の気持ちをささげた。冷え込みが続く観光業界への起爆剤にしようと、温泉街や観光協会の関係者らは、さまざまな記念イベントの準備を進めている。

 蔵王温泉は西暦110年、日本武尊の東征に従った吉備多賀由(きびのたがゆ)により発見されたという伝説が残る。強酸性の泉質で、古くから皮膚病に高い効能があるといわれ、1日約8700トンもの湯量を誇る国内有数の名湯だ。

 温泉街に伝わる洞開は、風呂の栓を意味する「洞」を開け、湯を抜いて清掃し、新たな湯をためる行事。蔵王温泉では江戸時代から続いているとされ、正月恒例となっている。

 旅館経営者ら約60人が温泉街にある上湯、川原湯、下湯の3カ所の共同浴場を清掃。上湯では開湯1900年を記念して2人の巫女(みこ)が湯をくみ上げ、神事が執り行われた。蔵王温泉旅館組合の伊藤八右衛門組合長は「節目の年なので、今年は特別な年にしたい」と意気込みを語った。

 春や夏は新緑を楽しむ観光客、秋は紅葉、冬はスキーや登山客など、年間で約100万人を超える観光客が訪れる。温泉街は100軒以上の旅館やホテル、民宿などが立ち並び、山形県内でも最大規模の温泉地だ。ここ数年はスキーを楽しむ台湾や韓国などからの外国人観光客も増えている。

 年間を通した観光客は年々減少。2008年度は約122万6000人で、前年度から約12万人も減っており、観光関係者らは頭を抱えている。

 旅館組合や蔵王温泉観光協会は、今年を観光客増加に向けた絶好のチャンスととらえ、春から夏にかけて記念式典や誘客キャンペーンなどを計画している。観光協会の岡崎宏一会長は「不況の影響もあって大変厳しい状況が続いているが、温泉街全体で力を合わせ、蔵王温泉の魅力を発信していきたい」と話している。

2010年01月09日土曜日

重度知的障害者の逸失利益認定

北海道北斗市の福祉施設で2004年、入浴中に死亡した重度知的障害者の少年(当時16歳)の両親(野辺地町在住)が施設を運営する社会福祉法人などを相手取り、約7300万円の損害賠償を求めた訴訟で、生きていれば得られたはずの逸失利益を含む約3200万円の支払いを命じた青森地裁の判決について、原告、被告側ともに控訴しない方針を固めた。これにより、控訴期限の8日、判決が確定する見込み。原告側の弁護士によると、重度知的障害者の逸失利益を認めた全国初の判決となる。

 「お母さん頑張ったよ。ずっと見守ってくれてありがとう」

 少年の母親(51)は判決が言い渡された昨年12月25日、傍聴席で抱えた遺影に小さな声で語りかけた。事故から5年5か月、提訴から2年9か月たっていた。

 「息子さんがお風呂でおぼれて…」。04年7月21日、自宅近くのスーパーで買い物中、施設の職員から携帯電話に連絡が入った。翌日帰省する息子にと、好物の焼き肉の材料を買い込んでいる最中だった。「明日から夏休み。おうちに帰るから目を開けて。起きて、起きて」。駆けつけた警察署の安置室で、冷たい息子の体を何度も揺すった。

 息子は持病のてんかん発作を起こし、入浴中におぼれた。職員は事故時、付き添っていなかったと知った。「以前にも発作を起こしているのに、なぜ」。施設の管理に疑問がついて回った。その疑問に、施設が示した文書が拍車をかけた。「逸失利益はゼロ」――。生きていれば得られた収入はないと、損害賠償を巡るやり取りで告げられた。

 「重度の知的障害者の逸失利益を認めた判例はありません」。相談した弁護士に教えられた。それでも、「踏み台になってもいい」と提訴を決めた。「スキーは上級者コースを滑れたのに。一人で電動工具が操作でき、施設も作業能力があると言ってくれていたのに……」。07年3月、息子の名誉のため訴えを起こした。

 「重度知的障害者がなぜ7000万円以上も取るんだ」。中傷の手紙に胸を痛めたこともあった。「我が子に値段をつける親なんていない。金額はどうでもいい。尊厳を取り戻したいだけ」。勝訴を告げた判決後、涙声を絞り出した。「息子の命は判例となって生き続けます」

 判決の確定する8日には、あの日食べさせてやれなかった焼き肉をこしらえるつもりだ。「大好きなカルビや牛タン、おなかいっぱいに食べてね」(木瀬武)

(2010年1月8日 読売新聞)

ポカポカ 温か~い言葉 宇都宮の健康ランド『ありがとう風呂』

大切な人への感謝の言葉を記した日光杉並木の間伐材を湯船に浮かべた「100のありがとう風呂」が、宇都宮市今泉の健康ランド「ザ・グランドスパ南大門」に登場し、人気を集めている。

 風呂は、世界一長い並木としてギネスブックに認定されている日光杉並木をPRしようと企画。材木業者から仕入れた間伐材を直径十五センチ、厚さ三センチに切り、メッセージを書き込んだ。

 「いつも感謝している」「笑顔をありがとう」といった九十九のメッセージは従業員が記入。残り一つは、利用者に自分で記入してもらう。担当者は「杉の香りが漂うお風呂で感謝の気持ちを伝え、心も体も温まって」と呼び掛けている。

 次の実施期間は八~十二日。問い合わせは南大門=(電)028(622)1126=へ。 (横井武昭)

日本酒の美肌成分を解明 名市大「塗ってもスベスベに」

寒い冬に熱かんで美肌効果-。名古屋市立大の岡嶋研二教授(展開医科学)らの研究グループが、日本酒の美肌効果のメカニズムを解明した。肌に塗っても、そのまま飲んでも良いといい、風呂に入れるなど美肌効果は知られているが、科学的にも立証した形だ。

 着目したのは、日本酒を造る過程で、米こうじと酵母菌によって作られる糖アルコールの一種「α-グルコシルグリセロール」(αGG)。研究グループはマウスの知覚神経細胞を培養し、αGGを加えると、伝達物質が放出されることを確認した。

 次に、マウスの肌に塗ると、その伝達物質を介し、細胞の再生や血流増加、汗腺の活性化効果などを促す「インスリン様成長因子-1(ローマ数字の1)」(IGF-1)が増加することを突き止めた。αGGの濃度を0・005、0・01、0・05、0・1%-と変えて実験すると、0・01%の溶液が最も皮膚のIGF-1を増やすことが分かった。皮膚のコラーゲン量も1・2倍になった。

 さらに、20代から40代の女性で実験。13人にαGG溶液を2週間肌に付けてもらい、専用機器で肌の弾力を比べると12人が向上。「肌がしっとりした」と好評だった。美肌効果に適量のαGGが関係していることが分かり、美容への応用の幅が広がるという。

 岡嶋教授は「日本酒のαGG含有量は約0・5%。肌に塗る場合は50倍に薄めるといいだろう。飲んでも効果があり熱でも壊れない」と話す。