2月8日18時13分配信 産経新聞
サッカーのキリンチャレンジ杯フィンランド戦(4日、国立)を5-1の快勝で飾り、年明けからの沈滞ムードをどうにか振り払った日本代表。いざW杯アジア最終予選の大一番、豪州戦(11日、日産ス)へ決戦ムードが高まりつつある中、選手にはうれしい”ご褒美”が待っていた。
フィンランド戦後、取材エリアに現れた選手たちの服装はバラバラだった。今は合宿中、普通はそのまま宿舎に帰るだけだからジャージー姿のはず。ところが何人かは外出用のスーツ姿だった。
なぜ? 「言っていいんですかねぇ。明日がフリーになったんです」とMF香川真司(C大阪)。そう、岡田監督は試合終了後、選手に約1日半の「自由時間」を与えたのだ。
チームは1月10日に鹿児島県指宿市内で合宿をスタートさせた。途中、休日も計3日間あったが、初日から参加している選手にとっては合宿生活もそろそろ1カ月になる。慣れているとはいえ、練習場とホテルを往復する単調な毎日、代わり映えのしない食事はストレスがたまるもの。これまでも海外遠征時にチームで近郊の日本料理店や焼き肉店に出かけ、夕食をとるなどの気分転換を図ることもあったが、岡田監督は今回、思いきって当初予定されていた5日の練習をキャンセルした。
6日の昼食時に集まっていれば、それまで何をするかは選手の自由。外出も許可した。「何をする? それはヒミツです」。MF橋本英郎(G大阪)はフィンランド戦後、そう言ってどこかへ出かけていった。
実際、選手は友人と会ったり買い物したり、思い思いの「休日」を過ごしたようだ。DF長友佑都(F東京)は香川を連れ、スーパー銭湯へ。「リフレッシュできました」と笑う。DF田中マルクス闘莉王(浦和)は「有効に使いました。何をしていたか? とても言えません」と報道陣をけむに巻いた。
もちろん、宿舎に居残っていてもいい。フィンランド戦2得点のFW岡崎慎司(清水)はずっと「ホテルでゆっくりしていた」という。先月4日に誕生したばかりの長男・刀也(とうや)ちゃんになかなか会えないのが今の悩みだが、前回のオフ時にここぞとばかり写真やムービーを撮りだめ。「何度も(再生して)見てました」と父親の顔をのぞかせた。
そんな中、休日返上で練習場に姿を見せた選手も2人。腰の違和感を訴え、フィンランド戦出場を回避したFW田中達(浦和)は豪州戦での復帰へ向け、トレーナーとともに腰の状況を確かめながら体を動かした。先月、初の代表入りを果たしたGK菅野孝憲(柏)は「いつも体を動かしているから。いつでも試合に出られるよう準備はしておきたい」。いかにも「練習の虫」の菅野らしい行動だ。
ちなみに、岡田監督本人は-。
「暇だったから、ビデオを5、6本見ていた。豪州のビデオも見たし、フィンランド戦もね。プレミアリーグも見た。分析するような感じで見ていたわけではないけど」。選手については「リフレッシュ? うん。みんなそれなりに工夫して過ごしてくれたみたい」と効果を実感した様子だったが、指揮官自身の頭の中はサッカー一色だった。
豪州は単にW杯出場を争うライバルというだけではなく、ドイツW杯で敗れた因縁の相手。「W杯4強」を目標に掲げる岡田ジャパンにとっては、現在の力を測る試金石となる試合でもある。
1日半のつかの間の休日は、そんな大一番を前にした最後の息抜き。6日に練習を再開した日本代表は、7日から早くも非公開練習に移行、戦闘モードに突入した。1カ月にわたる合宿も最終コーナー。ささやかな「アメ」を与えた後、岡田監督はとうとう「ムチ」を入れ始めた。(森本利優)