子どもの可能性をどのようにして引き出すか―。ある保育園での実践を取材しました。
畑で野菜を育てて自分たちで料理をする保育園児。
自然とふれあって何が危険か、からだで覚えます。
年齢の違う子どもが一緒に過ごし人間関係を学ぶ―。
そんな子育てに、ある保育園が取り組んでいます。
広島市東区尾長にある保育園、「広島修道院保育センター」です。10年前に開園しました。定員は75人。0歳児から5歳児まで5つのクラスがある小規模保育園で、家庭的な雰囲気を大事にしているといいます。
園内にある畑の野菜は、子どもたちが水やりや草抜きなどの世話をしています。
「まずは水をつけて。水をつけてやらんと、はなちゃん」(園児)
収穫して、自分たちで料理も体験します。
「自分たちで身近で、いろんなものを感じながら、実体験をするっていうことは、教えてもできないことなので、今の時期にそういうものに触れて感じるということは、大切なことだと思います」(田中照奈園長)
「わぁー、いいにおい」
「みんなで作ったけえ、おいしい」(園児)
「いいですか。はい、お願いします。じゃあ行くよ、出発進行! 」(保育士)
この日は、3歳児と4歳児が近くにある二葉山まで、片道2時間かけて歩きました。
「どこまで行くの? 」(地域の人)
「ふたばやま! 」(園児たち)
「二葉山登るの? うわぁー、うそじゃ。おばちゃん、よう登らん。いってらっしゃい」(地域の人)
山道では、どんぐり拾いに夢中になりました。
「これねえ、クマがほったあな! 」(園児)
「山の中では、危険なことがいっぱいあるので、自分たちで自分たちの体を守る、安全を意識するっていうことにもつながると」(田中照奈園長)
「どんぐりがいっぱいあった」(園児)
「いっぱいあったよね。 数え切れんぐらい」(竹内悠古主任)
「数えれんぐらいよ。次はでかいどんぐり書こおっと」(園児)
保育士と話しながら絵を描く園児。ひとりではうまく言葉にできなかった思いを絵で表現できるよう、保育士が手助けをします。
「彼は、熊に会いたかったみたいで、山の中で。それがすごい残ってるので、たくさん見つけた穴がたぶん描かれてるんですけど。山の中で探検遊びをしながら登っていくと、山に好奇心が強くなっていくし、それが山が好きにつながっていったら、大きくなったら、きっとこの子は山を大事にしてくれるんじゃないかなって」(竹内悠古主任)
「お疲れさまです。仕事明けで大変なんですけど、異年齢の今年度について話し合いたいと思います」(竹内悠古主任)
この保育園では、6年前から年齢の違う園児が一緒に過ごす「異年齢保育」に取り組んでいます。月に1回、3歳、4歳、5歳の子どもが混じったグループに分かれ、いろんなことにチャレンジします。同じ仲間と1年を過ごします。
「やっぱり3歳と5歳となると、すごい差が出てくるんで、空組(5歳児)ができるんで 先に進んでしまって、あとの子が置いてけぼりになったりとか、ちょっと私はそこをストップはかけるんですけど」(保育士)
「自分がやりたいようにだけじゃなくて、星組(3歳児)がちゃんとできることがあるかとか、助けてあげれるかとか、そういうところにも目を向けてほしいなっていうのはあります」(保育士)
年齢の違う仲間と一緒に「お店やさんごっこ」です。グループでやりたい店を決め、一緒に商品や道具を作ります。
「ぼく、モグラ(たたき)がやりたいんじゃもん」(園児)
「それはよく考えてね。ぼくだけがやりたいのでいいか 考えてよ。じゃあ、ボーリング場やりたい人? 空組(5歳児)のゆうちゃん、1人でできる? できんと思うよ、先生。どうしようか? 」(保育士)
「じゃ、ぼく、ボーリング」(園児)
「ボーリング行く、行ってくれる? 」(保育士)
回転すしやジュースのお店、それにお風呂屋さんなどを始めるため、子どもたちが力を合わせました。
そして、オープンの日です。
「いらっしゃいませ! 」(園児たち)
年上や年下の子と接することの少ない今どきの子どもたちが相手を意識して、つきあい方を覚えていく機会になっているようです。
「大人、子ども、どっち? 」
「子どもよ」(「お風呂屋さん」で園児のやり取り)
自分で育つ力を持っている子どもたちをどう支え、可能性を引き出していくのか。大人社会が変化し、子育てが難しくなるなか、保育園の果たす役割が大きくなってきているように思えます。
[5日21時7分更新]